マルチメータの最適調整と校正方法について

2023.2. 5 作成(2023.2.11更新)  2024.2.12 追加更新

3桁半マルチメータ(フルーク175、177,179、83V、87V、87Vなど)
4桁半マルチメータ(フルーク187,189,287、289、45など)
の最適調整・校正について実際の校正手順を記載いたします。

@入荷検査  とりあえず正常に動作するかの簡易的な校正
 使用標準器類 マルチファンクションキャリブレータ 可変抵抗器
 直流・交流標準電圧電流発生器  直流標準抵抗器、抵抗校正装置等
 これは簡易的な校正なため上記使用標準器類を直接使用して校正対象機器の
 各1/2から1/5程度の校正確度にて、ざっと測定値を確認します。
 トレーサビリティA(他と重複無し、他とは独立してる)を使用しています。

@最適調整の前の校正確認  これは不要であってもどの程度の誤差があるかを
 確認しています。もしも最適調整後に調整前のデータがほしいと言われた時に
 最適調整後では調整前試験データをとれないためです。
 トレーサビリティB(他と重複無し、他とは独立してる)を使用しています。

@最適調整  照合用標準器の現在の誤差を確認して非常に小さい誤差にて校正
 通常はメーカ推奨校正器を使用しての校正レベルが基準となります。4桁半マルチ
 メータのフルーク287、50000カウント時では本体仕様確度が最良で±0.02%と
 しますと誤差は最終桁が±10カウント分となります。(287実際の仕様とは異なる)
 メーカ推奨校正器ですと同様に最終桁が±3〜カウント分レベルの校正確度です。
 電気計測超精密研究所では最終桁に影響が少ないレベル(最良±0.5カウント〜)
 での校正となりますので最適調整・校正時に校正器の誤差がなるべく小さい状態で
 直流電圧の校正を実施しています。(ほぼ校正誤差無しに近い状態で調整)
 抵抗ですとkΩレンジではメーカ推奨校正器ですと同様に最終桁が±5〜8カウント
 分レベルの校正確度ですが電気計測超精密研究所では最終桁±1カウント分
 レベルの校正確度です。(kΩレンジの場合。抵抗レンジによる)
 さらにMΩレンジでは測定リードのリーク(絶縁抵抗不良)、ノイズなどがあるため
 電気計測超精密研究所ではそもそも誤差がはいる原因となる測定リードを使用しない
 方法にて校正を実施しています。287では最高で500MΩの校正があるが通常の
 リード線などを使用しでの校正ではノイズ、振動などにより数%変動するため校正
 どころかまともに測定不可ですので校正確度も含めた総合校正確度を高めています。
 通常のシールドなどの無い一般的な測定リードは絶対使ってはいけません。
 仮にシールド線のリードを使用してもリード線間の絶縁抵抗値は1000MΩに
 対して−0.1%誤差になる1000GΩより大きい必要があります。

 4桁半マルチメータ校正では一般的な校正器ですとフルーク社の5500Aですが
 より高確度の5520Aがありますが発生レンジの問題があり、1.1または3.3で
 レンジが切り替わるため、レンジの5の倍数で校正するには確度が低下する場合が
 あります。電気計測超精密研究所では反対に確度の良いレンジで校正して最適
 調整・校正などに使用しています。例えば5MΩの校正では5520Aでは11MΩ以下
 の抵抗発生レンジとなるので発生確度は±0.013%±0.00005MΩですが
 電気計測超精密研究所では5MΩを直接接続自作標準抵抗器を直接測定しても
 測定確度±0.006%であるし、もっと高確度で測定出来るように製作しているため
 ここではそこまでの測定確度は必要ありませんが±0.002%で測定可能です。
 同様の例えで50MΩの校正では5520Aでは110MΩ以下の抵抗発生レンジと
 なるので発生確度は±0.05%±0.003MΩですが電気計測超精密研究所では
 50MΩを直接接続自作標準抵抗器を直接測定しても測定確度±0.05%で
 もっと高確度で測定出来るように製作しているため、±0.01%で測定可能です。
 (発生抵抗値は毎回確認済なので常時この高い測定確度が使用可能です)
 同様の例えで500MΩの校正では5520Aでは1100MΩ以下の抵抗発生レンジと
 なるので発生確度は±1.5%±0.5MΩですが電気計測超精密研究所では
 500MΩを直接接続自作標準抵抗器を直接測定しても測定確度±0.5%であるし
 もっと高確度で測定出来るように製作しているため、ここではそこまでの測定確度
 は必要ありませんが±0.2%で測定可能です。5520Aでの校正は本体の発生
 確度であるので通常のシールドなどの無い一般的な測定リードは使えません。
 
 低抵抗500Ω、50Ω(289のみ測定可能レンジ)ではリード線の抵抗が主な誤差と
 なりますのでこれもリード線などの抵抗値を含めて十分な校正確度で実施です。
 実際の校正・調整では一般的な、6ダイヤル可変抵抗器(確度±0.01%±2mΩ)
 などではなくesi RS 925A  9ダイヤル可変標準抵抗器(4端子で正確に抵抗値
 を発生可能で確度±0.002±1mΩ、実際にはその半分以下)を使用しています。
 トレーサビリティC(他と重複無し、他とは独立してる)を使用しています。

 3桁半マルチメータのフルーク175、5000カウント時では本体仕様確度が最良で
 ±0.1%としますと誤差は最終桁が±5カウント分となります。(175の実際の仕様
 とは異なる)実際の校正時の環境では最終桁±1カウントも変動しないため実質
 最終桁±1カウント分(=±0.02%)に影響しない校正確度±0.002%程度
 で直流電圧の校正を実施しています。他の機能も測定確度により校正確度は
 変動しますがそれなりの高確度で校正となっています。

@最終校正  これも複数の標準器を使用して機器により複数回、日数をあけて実施
 最終校正は @最適調整では使用していない別の標準器でも校正確認を実施
 1つの標準器だけですとそれが故障していたり、たまたま不都合があった
 などを回避するためです。標準器の信頼性が確認出来ないと校正になりません。
 校正作業全体で電気計測超精密研究所では実際に3つ以上の標準器を
 別々に使用するようにしています。トレーサビリティは複数あるが
 トレーサビリティD(他と重複無し、他とは独立してる)を使用しています。

2023.3.2 トレーサビリティ追加更新
 トレーサビリティは要求される校正確度によりABCDEFのいずれかを使用して
 校正・最適調整を実施しています。トレーサビリティは他と重複無しで
 他とは独立して別々基準値からトレーサビリティを確認して使用しています。

 電気計測超精密研究所はJCSS、ISO/IECなどの認定業者とは
 関係ありません。トレーサビリティは上記のように複数の基準から確認
 しています。認定業者になるには書類・書類・作業手順書など書類ばかり
 必要になり時間の無駄となります。電気計測超精密研究所は認定とか煩雑な
 ことは必要なく、純粋にいかに確度をおとさずに校正範囲を広げるか?
 などを追及しています。JCSS認定業者になりますと最高校正確度も
 一般公開されていますが直流電圧10Vで0.001%などとあるが
 これは一般的な8桁半DMM1台で実現可能である。
 直流電圧11Vは?抵抗・電流は認定が無いなどがかなり多く、ただの?
 「認定業者」になってるだけの校正業者が多数です。
 電気計測超精密研究所 標準部 トレーサビリティ体系図詳細をみると
 非常に詳細が公開されています。
 トレーサビリティは通常はごく簡単にかかれている場合がほとんどです。

2023.3.15追加更新
 6桁半DMMでキーサイト社34401Aなどでは直線性の規定があります。
 一例では±(0.0002%+0.0001%)となっています。
 電気計測超精密研究所ではHP3458Aの直流10Vレンジの10分間
 安定度±(0.000005%+0.000005%)を使用して確認しています。
 実測ではDC±12V〜±1Vにて±0.0001%を簡単に見ています。
 24時間安定度±0.002%レベルですからそこまで確認する必要は
 無いかもしれませんが電気計測超精密研究所では実施出来ますので。

2023.4.2 追加更新
 ワイドレンジのHP3478A、HP3468A、ADC7451Aなどについて補足
 HP3457Aを除いては一般的な6桁半DMMは最大表示が1200000
 などがほとんどですがレンジUPによる測定確度低下がある場合は
 最大表示300000の5桁半DMMも出番がありそうです。高抵抗の
 最適調整・校正では校正確度が低下しないように、絶縁抵抗低下などを
 回避する、ノイズがはいりにくい方法にて実施しています。
 電気計測超精密研究所の測定誤差は非常に小さいのですが校正時に
 他の誤差がいろいろ入るといくら校正確度が良くても意味がありません。
 電気計測超精密研究所では例えば30MΩレンジで最適調整・校正は10MΩ
 1点だけでも可能ですが内部絶縁不良(他故障なども含む)ですと30MΩと
 1MΩ〜25MΩを測定すると直線性誤差が出ますので、それを確認するには
 ±0.005%測定確度でそれぞれの抵抗値を校正して確認しています。
 正常品であれば30MΩで調整し、10MΩを測定すると10MΩの±00.001
 MΩ以内に通常は測定されます。不良品だと±00.002以上となります。

測定誤差簡易比較表(年間確度を適用した参考資料)
注:@34401Aは30MΩ測定では測定確度のかなり悪いレンジに変更のため一桁誤差増加!
  なお、他の6桁半DMMでもADC社7461Aなどでも上記同様近い状況になります。(一部を除く)
#:下記の電気計測超精密研究所の測定誤差は最適調整・校正時に適用になります。
 

機能・レンジ 測定値 キーサイト社
34401A
HP社
3468A
ADC社
7451A
電気計測超
精密研究所
DC 3V 3.00000 ±0.00017 ±0.00056 ±0.00033 ±0.00001
DC 300V 300.000 ±000.025 ±000.062 ±000.045 ±000.002
4WΩ 30kΩ 30.0000 ±00.0043 ±00.0050 ±00.0042 ±00.0002
2WΩ 3MΩ 3.00000 ±0.00130 ±0.00050 ±0.00109 ±0.00003
2WΩ 30MΩ 30.000 ±00.250 ±00.024 ±00.062 ±00.001
AC3V 1kHz 3.0000 ±0.0048 ±0.0088 ±0.0030 ±0.0004
AC3V100kHz 3.0000 ±0.0260 ±0.0397 ±0.0204 ±0.0026



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高性能
No1
高額・
高性能
No2
コスト
パフォーマンス
No1
コスト
パフォーマンス
No2
安価
No1
安価
No2
8桁半 フルーク
8588A
フルーク 
8558A
HP
3458A
ケースレー
2002
R6581 1271
7桁半 キーサイト 
34470A
ケースレー 
2001
       
6桁半 キーサイト
34465A
フルーク 
8846A
HP
34401A
ケースレー 
2000
HP
3457A
7562
5桁半 フルーク
8842A
フルーク
8840A
HP
3478A
HP
3468A
7552 7555
4桁半 フルーク
289
フルーク
287
R6441C フルーク
87V
7541 OW18D
3桁半 フルーク
179
フルーク
177
フルーク
175
フルーク
233
フルーク
7X
MS
8229

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